はじめに
長く投資を続けていると必ず経験する株価の暴落ですが、世界を見渡せば金融危機の引き金となるような出来事が常に存在しています。
例えば現在の米国は新型コロナ対策として2020年から金融緩和を実行したことで経済が力強く回復した一方、今度は歴史的な高インフレに悩まされています。
その他にも新型コロナの影響で世界的な半導体不足が発生し、主にハイテク企業のサプライチェーンに深刻な影響を与えています。
また欧州ではロシアによるウクライナ侵攻が続いており、現時点での解決の糸口となるような出口戦略がはっきりしていません。
つまり不透明な状況の何が金融危機の引き金となるのか、事前に予測することは極めて難しいのです。
今回は過去の金融危機の歴史を振り返りながら、マクロ経済の視点で金融危機とその要因を紐解いていきます。
金融危機の歴史と金融危機が起こる最大の要因
世界的な金融危機はこれまでも何度もやってきました。例えば1987年ブラックマンデー、1997年アジア通貨危機、2008年リーマン・ショック、2020年新型コロナショックなどの金融危機がこれまでに起こりましたが、金融危機における大きなリスクのひとつがデフォルト(債務不履行)です。
デフォルトとは本来履行されるべき債務が不履行になることで、国の場合、国債の利払いや返済が出来なくなった状態を指します。では国際的な金融危機がなぜ起きるのでしょうか。
それぞれに要因は異なるものの、そこにはいくつかの共通するパターンがあるので、今回はA国を例に金融危機までの流れを見ていきます。
まず金融危機が発生する前の段階で、A国が投資先として注目され外国の資本がA国に大量に集まります。
そこでA国の銀行は潤沢な資金を使って積極的な融資を進めていきます。
積極的な貸し出しをして行く過程で徐々に返済が滞る件数が増加し、結果的に金融危機へと繋がってしまうのです。
では株式市場ではどんな流れかというと、外国の投資家がA国に投資をすることでA国の株価が上昇していきます。
しかし株式の場合もある時点を境に外国の資本がピタリと止まることがあります。
そうなると銀行の融資を支えていた外貨が止まるため、それまで株価を支えていた前提条件がなくなり、金融市場が大きく混乱します。
これも金融危機が起こる大きな要因となるのです。
ここで難しいのは何がキッカケで資金が集まり資金が引き上げるのかを事前に予測することは困難であることです。
ほんの些細な事がキッカケで後に大きな混乱のトリガーとなる事が金融危機の場合は度々あるからです。
また株式市場は常に未来を織り込んだ期待値が株価へと反映されています。
そのため流行に流されやすいという特徴もあるのです。
金融の世界では「オーバーシュート」という言葉がありますが、資金が一つの国へ加熱することもあれば、一気に相場の流れが逆流することもあります。
そして資金が安定しない国の通貨は不安定になるため、その国の通貨への信頼が下がることにもつながります。
実際、何度も短期間で通貨が暴落する事例が起きているのは、相場が投資家の期待値によって動いているからです。
金融危機を防ぐための有効な手段はあるのか
では金融危機の発生を防ぐための有効な手段は何かといえば、最も効果があるのが国外からの投資であり、内訳としては「直接投資」と「証券投資」の2つのパターンがあります。
直接投資とは企業や工場などを直接購入する方法です。具体的には外国で子会社の設立や経営参加を目的(株式取得)としたものや、実際に経営をすることでより多くの利益を生み出すことを目的とした投資のことを直接投資と呼びます。
証券投資とは債券などの金融商品を購入する方法です。
この場合は経営への参加を目的としている訳ではなく、株式を保有することで得られる配当金や株式の売却益を目指して外国の証券を購入する方法です。
直接投資と証券投資を比較した場合、国外への資金流出が少ないのが直接投資です。
なぜなら直接投資の場合は証券ではないので、簡単に企業や設備を売却するのではなく、基本的には長期投資を前提とした投資が大半を占めるからです。
その他に金融危機を防ぐために考えられる手段としては、金融システムによる一定の規制も検討の余地があるでしょう。
例えば現在のような円安ドル高の局面がやってきたときのために、あらかじめ各銀行が為替の変動に備えるという体制を作ることで、銀行が国に頼りすぎない為替リスクを意識した経営を促すことも検討の余地があるでしょう。
そのために国が一定のルールを決めて、国がカバーする範囲を意図的に狭めることをもっと議論しても良いかもしれません。
またグローバルな枠組みとしては国際通貨基金(以下,IMF)という国際機関があります。
IMFは主に国際収支が悪化した国に対して融資を行なっており、この融資は短期ではなく長期の融資をすることで経済の抜本的な改善を促そうとしています。
とはいえIMFの場合、金融危機が起きた後に対応する機関であるため、やはり未然に金融危機を防ぐことがベストな方法です。
金融危機や国が破綻した場合の国際的な取り組みは長年議論されていますが、ルールが出来ても実際の強制力がどれほど実体を伴うものとなるかは分かりません。
しかし投資家は先行きの不透明さを最も嫌うため、金融関係者はあらかじめ危機に対応するガイドラインや出口戦略を想定しておく事が安心を提供する上で大切な心構えかもしれません。
おわりに〜もしも米国経済が崩壊するとしたらどんなシナリオか〜
米国株に投資をしている方なら最も気になるのが現在の米国経済ではないでしょうか。
米国はインフレに悩まされていますが、もしも米国経済が金融危機によって崩壊するとしたらどんなシナリオになるのか、最後に考えてみましょう。
米国を他国と比較した場合の最も異なる特徴は何かというと、米ドル(以下ドル)は世界の基軸通貨であるため、他国からお金を借りる場合も自国通貨であるドルで借りることが出来ます。
このメリットが何かというと、同じドルで借り入れをするため、為替の変動によって返済不能になるリスクがありません。
むしろ米国企業にとっては借り入れ時よりもドル安になっていた方がコストが下がることになるのです。
では米国は自国通貨で世界中の国々と取引をしているので安全かといえば、100%安全とはいえないでしょう。
なぜなら為替レートの変動がない場合でも金融危機が起きた例があるからです。
例えばユーロ圏ではPIGS(またはPIIGS)という言葉があります。
これはポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの頭文字をとった造語ですが、2000年代にユーロ圏のこれらの国で為替変動リスクがないにも関わらず金融危機が起きています。
では米国経済が崩壊するとしたらどんなシナリオがあるかというと、国外からの投資が減少した場合です。
それは米国以外に住む投資家がドル資産を増やすことに魅力がなくなったことを意味しますが、現在の米国企業はGAFAM+Tなどの企業が次世代産業において世界をリードしています。
こうした米国企業の優位性が揺るがない限り、米国は金融危機に直面しても何度も何度も危機を乗り越えてきたことを歴史が証明しています。
少なくとも10年、20年先の資本主義社会において米国が覇権国であり続ける確率が高く、それは米国への投資が今後も魅力的であることに他なりません。
今回は避けては通れない金融危機について、マクロ経済の視点から解説させて頂きました。
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