白石 定之様

IFAの皆様に、それぞれのキャリアや投資に関する考え方、日々の業務についてをインタビューする連載コラム。

 今回のIFA個人インタビューは、白石 定之様にお話をお伺いしました。

目次

なぜ金融業界を選んだのでしょうか。

一番最初のきっかけは、中学3年生のときに始めた証券投資です。当時、父親から300万円の運用資金を用意するから自分で運用して大学に行くか、親のすねをかじって大学に行くか決めろと言われ、じゃあ、運用するということで始めました。

大学卒業後、日立製作所に入りましたが、5年たった頃に証券業界に行きたいという思いが強くなり、思い切って野村證券に転職しました。

 証券会社にご入社されていかがでしたか。

野村證券に提出した履歴書は、自分ほどお客様のことを考えている証券マンはいないくらいの勢いで書きました。自分自身がずっと個人資産を運用してきたという自負があるので、お客様の資産も増やしていけるという、そういう思いが根底にあるためです。今思うと、証券マンに対してそのような生意気な事をよく言えたものだと思いますが、野村證券の面接をしていただいた方は心の広い方で、採用していただき、本店営業部にファイナンシャルアドバイザー(以下、FA)として配属されました。

野村證券には、会社としてマーケットをどのように捉えて、課や部といった組織としてどのようにお客様に取り組んでいくかという方針がありました。入社前の業務紹介ビデオを観たときは、自分でスケジュール管理をして、お客様のために自分の考えで動けるような、そんな印象を持ちました。でも、実際には自由度は限られていて、会社という組織としての収益目標があって、その達成に向かってまい進するというものでした。自分の中では、会社の方針と自分の考えとの間にあるギャップに葛藤しながら活動していました。

その後今の会社を立ち上げた経緯を教えてください。

正直に話すと、野村證券を退職する1年前までは定年までいるつもりでした。FAとして活動する上で、私自身に信念があって、どんなに上から言われても自分が納得できないと動けないところがありました。今思うと大変申し訳ないのですが、上司は私の対応に相当苦慮したことと思います。ただ、私自身お客様を獲得していて、それなりに会社に貢献していたこともあったのに加え、言っても聞かないと諦められていたこともあったのでしょう。あまり上司から強く言われることはありませんでした。

しかし、退職1年前に上司が代わったこと、会社として収益が厳しかったこともあって、私に対する収益の圧力が強くなりました。私自身、収益のために働いているのではないという思いが強くあったので、次第にこのまま定年までは居られないと感じるようになりました。

当時在籍していた本店のFA部隊に、また、全国にも優秀なFAがいて、よりお客様の立場に立った形に変えていこうとする動きもありました。でも、会社は巨艦なので変えることは簡単ではありません。それならば外から変えてやろうと、思い切って野村證券を退職することを決意しました。退職するときは、このまま定年までは居られないという思いと同時に、こんな収益重視の営業スタイルはありえないという怒りにも満ちていました。今は怒りは全くありませんが。証券業界に限らず、営業部隊に対して収益目標を掲げてその達成にまい進するという形を取っているほうが普通で、私のほうが異常だったのですが、当時はそのように思っていました。

当初は会社を立ち上げることも考えながら楽天証券とお話をしていましたが、実際に会社を立ち上げて社長になると、内部的な仕事が多く、なかなか営業に時間を割けないとアドバイスをいただきました。そこで、既に立ち上がっているIFAファームを紹介してもらい、入社しました。ここでは2年9ヶ月間お世話になりました。そのIFAファームの代表は、私が野村證券の優秀なファイナンシャルアドバイザーを引っ張ってくることを期待していましたし、私もこのIFAファームを大きくしていきたいと思っていました。ただ、当時は証券マンのほとんどがIFAという存在をまだ知らない状況で、IFAとして独立するにも勇気がいるため、実際に仲間を増やすことは簡単ではありませんでした。また、私自身があくまでも会社に属する1人のIFAにすぎない立場なので、活動するにも当然ながら会社の代表の考えの中でとなります。このままでは証券業界を外から変えてやるという思いを実現できずに人生が終わってしまうという思いが強くなり、自ら会社を立ち上げる決断をしました。そうしてできたのが、当社マネーブレインです。

今のお仕事内容を教えてください。

私の提案スタイルは独特です。多くの方は国際分散投資を提唱されますが、私は基本的には日経平均のETFを使って投資比率を変えていく非・分散投資、非・長期保有のスタイルを提唱しています。

安くなれば段階的に買っていって、高くなれば段階的に売っていく形です。何を基準にして動くかというと、日経平均を構成する225銘柄の業績から見たときに割安か割高か、そして投資家心理は悲観かどうかという、業績と投資家心理の二つのファクターです。簡単に言うと割安で悲観であれば買い、割高で楽観なら売りという、それの間がいくつかありながら、いろいろな組み合わせの中で投資比率を変えていくやり方をとっています。

このスタイルの根底にあるのは、平均よりも上にお客様を導きたいという思いです。分散投資をすればするほど平均になる。長期保有すればするほどこれも平均になる。積み立ては毎月コツコツ買っているからこれも平均。つまり、国際分散投資は、根本的にやっていることは平均を目指しているわけです。しかし、私は平均を目指す運用をお客様にお伝えしたいのではありません。そのため、分散ではなく日経平均のETFに集中する手法をとっています。これをセミナーでお伝えして、共感いただいた方がお客様になっています。

私は、資産運用でうまくいかない一番の原因は、心理的なものだと考えています。一喜一憂する心理です。マーケットが上がって資産が増えるとワクワクしてしまって気分がいいので、そこでお金を投じてしまう。結果として高いところを買っていく。一方で、マーケットが急落すると怖くなってしまって買えない、もしくはまだ下がると思って売ってしまう。一喜一憂の心理はこれを私たちにさせてくると考えています。

このような状態にならないためにも、投資比率を変えて、下がれば下がるほど段階的に買っていき、上がってお客様の気分がいい時に引きます。これを繰り返し行ってお客様の一喜一憂の心理を乗り越えていくことが大事であると考えています。

現在、私は、楽天証券の投資情報メディアのトウシルに、「資産運用で人格を磨く」というシリーズのコラムを提供しています。第2回目では、増やしたいという思いがなくなったときに資産が勝手に増えるというテーマで、運用には心理が大きく絡んでいて究極は真逆にあることを書きました。増やそうという自我の思いが強ければ強いほど、一喜一憂してうまくいかない。本当に増やそうという思いがなくなったときに一喜一憂もなくなる。だから勝手に資産が増えるというものです。

また、一喜一憂の一つの表れとして、マーケットが下がって資産が減ったことを米大統領や総理大臣のせい、もしくは証券マンのせいだとか、人のせいにするというのがあります。人のせいだと思うから、怒りを持ったり心が動揺してしまう。全て自分の判断だというところに本当に立つことができれば、一喜一憂はしなくなります。

やりがいはどういったところに感じていらっしゃいますか。

コラムの第3回目のテーマは、「無私無欲と義が揃ったときに資産が増えた私の経験」でした。ある女性経営者で、カンボジアの女性を世界に羽ばたかせたいという夢をお持ちで、その方は、すぐに配当を払える状況ではないため、寄付だと思ってお金を出してくれる人を探していました。もし、自分の資産を増やすことだけを考えたなら、この方には出資しないでしょう。私自身は、その方が自分のためではなくカンボジアの女性のために本気で懸命になっていることに共感し、出資をしました。当然寄付に近い感覚でしたが、不思議なことに、翌月翌々月に自分の持っていた個別株が値上がりして、マーケットから出資分が戻ってきたのです。なるほど、世の中こういう仕組みになっているんだと思いました。

こういった体験もあって、資産運用でうまくいくには人格を磨いたほうが早いという考えになっています。それがさらに発展して、逆に資産運用を通して人格を磨くことができる、その結果、運用もうまくいき、人生も素晴らしいものにできるという考えに至っています。

私は、自分の資産が増えればよいという自身の儲けのためだけの運用ではなく、人格を磨きながらの運用、その結果として資産も増えているという世界を広めたい、これを日本人として世界に発信したいと考えています。今、世界がいかに自分が自分がになっているか、金融業界においては、いかに手数料取るか、いかに稼ぐかになっているように感じています。私はマネーブレインという会社を通して根っこからこれを変えていきたいと考えています。資産運用で人格を磨くという発想は日本人だから生まれてくる発想だと思っています。昔植民地になっている国を解放するために、自分のためじゃなくて人種差別撤廃という大義のもとに日本人が動いたように、自我ではなく大義で動く精神を世界にもう一度、日本人として金融の中で持っていきたいと思うのです。これができればすごいことになると思っています。お金を使っていかに儲けるかではなく、いかに人格を磨くかという発想で来たか!サムライが来た!日本人はすごい!と。

仕事をする上でのこだわりを教えてください。

誠実で正直であることです。私自身は、お客様に対して話すことと、社内で話すことは同じです。常に同じことを社内でも言いますし、お客様の前でも言います。基本的に隠し事はしません。誠実さを欠くと、お客様は直感でそれに気付きます。結果、きちんとその報いを受けることになります。誠実であること、正直であることは、経営についても、運用のアドバイスについても一番大事なことです。

今のお客様はどういった方が多いのでしょうか。

現在、「50代からの資産運用勉強会」というテーマでセミナーを開催しています。このため、お客様の属性は、経営者、サラリーマン、主婦、退職者とさまざまですが、50代、次いで60代の方が多いです。セミナーを「50代からの」としているのは、お伝えする内容が心理であったり哲学にも繋がってくるものなので、いろいろな人間関係の中で苦労をし、嬉しいことも辛いことも経験をされた方のほうが、ご理解をいただけるからです。そういった面もあって50代60代の方にもっとお会いしていきたいと考えています。

 普段どのようなご相談を受けますか。

ご相談内容はさまざまですが、どのようなご相談でも、最終的には投資比率を変えていくというスタイルに共感いただけるかどうかになります。

この方法には、3つハードルがあります。1つ目がまず今が安いか高いかの分析、判断です。当社は割安・割高、悲観・楽観を独自に分析していますが、この分析自体も簡単ではありません。2つ目は、会社を経営する上で収益がぶれることです。3月のコロナショックのような投資比率を変えるタイミングが来たときには収益が上がりますが、マーケットが凪状態のときにはほとんど収益があがらない状態になります。経営者がどれだけ耐えられるか。収益があがらない状態が長く続いたらそれに耐えられるだけの資金力も必要です。安定した収益を着実に上げて、右肩上がりにしていこうという発想の経営者には、この方法はできないと思います。3つ目は心理面です。これが一番ハードルが高いと感じています。お客様もそうですし、私たちもマーケットに一喜一憂してしまうことがあります。ルールがあるのに、まだ下がるんじゃないかなどといろいろ考えてしまって、ルール通りにご案内ができない場面です。ルール通りに進んでいれば、もっとお客様に良いパフォーマンスを与えられたのに、こちらが慎重になった結果、足を引っ張ってしまうことがあります。私たちの一喜一憂の問題ですので、私たちの側も修行していく必要があります。このやり方を始めて2年程経ちますが、机上の空論ではわからない心理的の苦労を、実践することによって体感しています。この苦労を実際に体感していることが、他社にはない当社にとっての大きなノウハウになっています。

ハードルが現れても怖くありません。何ごとも楽な道などなく、良い世界に行くには必ずハードルがあると考えています。このため、ハードルは大歓迎で、これを乗り越えたときにはより素晴らしい世界に行けると逆に楽しみにしています。

  過去に印象的だった案件はございますか。

案件ではないのですが、野村證券時代にFA部隊に一緒に属していた元証券ミディの女性の方々は、私よりもよっぽど成績を上げていました。私自身中学3年生からずっと証券投資をして、いかに個人資産を増やすかを考えてきましたので、知識に関しては自分のほうがあると自負していましたが、元証券ミディの方々のほうが成績が上がっている。なぜかと考えた時に、私は自分の知識をひけらかしている。あたかも自分の言う通りにマーケットが動くかのように語っている。このことが、お客様からすると私が可愛いと思えない存在であることに気づいたのです。逆に元証券ミディの方々はお客様の話をよく聞いて、心をつかんでいます。それからは、お客様の話を聞くように意識し、結果、それが大きなステージの変化をもたらしました。

日経のETFをされていると伺いましたが投資のアイディアはどのように発掘されていますか。

独自に分析をしていますので、IFISと契約をして業績を確認したり、ネットでロイターやルームバーグ、日経新聞などをチェックしています。運用会社や証券会社が発行しているレポート類を見ることもありますが、私自身、資産運用でうまくいく人は大衆側ではなく、少数側にいると思っているので、大衆側にならないようにということは意識をしています。資産運用を通して人格を磨くほうについても、将来は高校生や大学生にも広げていきたいと考えているので、引き続き哲学の勉強にも力を入れています。

今後の金融業界はどうなっていくと思いますか。

今の金融業界は、証券会社もIFA業者も運用会社も大きな流れとして薄利多売の厳しい道を進んでいるように思います。その先には淘汰、再編が待っていて、IFA含めた証券業界においては、ライフプラン+国際分散投資を中心にご案内していく会社、個々のIFAが活躍するプラットフォーム会社、当社のような個性を持ったブティック会社の3つの方向性に分かれていくのではと考えています。前者の2つはいずれ大手に集約をされていくでしょう。その一方で、3つ目の「うちはこれを提供します!」という個性的なブティック会社がたくさん出てくると、面白い業界になると思っています。

IFAとして活躍したいと考えている人は、想像以上に開拓は難しいということを念頭に置かれておいたほうがよいと思います。そうであるからこそ、自分がIFAとしてやりたいことと、属している会社のベクトルが合っていることが重要になってきます。自分に個性があり、開拓力があるのであれば、プラットフォーム会社に属するのも手でしょうし、より大きな形でやりたいという人は、ブティック会社を自ら立ち上げるのも手でしょう。一般に王道と言われる国際分散投資を勧めたいという人であれば、国際分散投資を提案している会社に属するのが良いでしょう。

IFA業界は可能性が大きく、まだまだ未知の業界だと思っています。いろいろな人がいろいろな考えでお客様のために活躍している業界、そんな業界になればと楽しみに思っています。

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